仕事をつくる


東京をはなれて、関西へ。


じぶんのフットワークが軽いとは思っていなかったけれど
一応のリミットと決めていた時期をすぎても
関西での仕事はみつからなくて、
はっきり言ってしまえば、
まじめに仕事を探すところまでもいかなかった。
グラウンドに、白い石灰でスタートラインを引いて
それをじっと見つめていた気分だ。


それで、ここにきて、
一歩も動けないままのぼくは、
とりあえず東京でフリーになって、
関西での(長期的でも安定的でもない)単発の仕事を探すほうが
リアリティーがあるんじゃないか、
という結論に落ち着いている。


「とりあえずフリー」に、
とは言ったものの、
居酒屋での「とりあえずビール」のようには簡単にはいかない。

ここでまた、腰の重さが発揮されてしまいそうだったのだけど
(運がいいのか悪いのかは、もう少し時間がたってからでないとわからないものの)
見計らったかのようなタイミングで
ふたつの出来事があった。


ひとつは、先に事務所を辞めていた先輩から
「仕事が忙しくなったから、手伝ってほしい」との申し出。
ぼくがいまもらっている月給の半分を出すから、
いまの仕事場に籍を半ばおきつつ、
半分フリーになればいいじゃないか、と。


ありがたい申し出なのだけど
いまの仕事場のボスが、
そんな都合のいい話を通してくれるものだろうか。


話してみたところ、あっさり大丈夫だった。
パソコンも、複合機も、住所も、自由につかっていい、と。
応援するよと。
これはちょっと泣けた。


もうひとつは、
友だちのウェブデザイナーが、独立するというはなし。

彼のいた会社の経営がむずかしくなって、
条件が悪くなるならと、ひとりでやることになったそうだ。
「一緒にやろうよ」とぼくは誘った。
「いいよ」と言われた。

ひとりで悶々とするより、
ふたりでミライをイメージするほうが、なぜか明るかった。


そんなおり、
青山ブックセンターで手に取った本が
西村佳哲の『自分の仕事をつくる』。


「仕事というものは、『就く』ものではなく、
自分で『つくる』ものだったんだ、と分かった」


こんな原研哉の帯コピーも目にまぶしかった。

なかを読んでいて、腑に落ちる文章にも出会えた。

ファシリテーター10カ条


1 主体的にその場に存在している。
2 柔軟性と決断する勇気がある。
3 他者の枠組みで把握する努力ができる。
4 表現力の豊かさ、参加者の反応への明解さがある。
5 評価的な言動はつつしむべきとわきまえている。
6 プロセスへの介入を理解し、必要に応じて実行できる。
7 相互理解のための自己開示を率先できる、開放性がある。
8 親密性、楽天性がある。
9 自己の間違いや知らないことを認めることに素直である。
10 参加者を信頼し、尊重する。


人が力を引き出される環境づくりが、仕事の第一歩。

友人とのオフィスづくりが、いまは楽しみだ。
といっても、
どこそこに場所を借りて、という話ではない。


それぞれが、場所と時間にかんして自由でありながら、
しかも、連携する。そのためには、具体的なオフィスを持たずに
どこでも即席のミーティングルームになり、仕事場になるようなシステムをつくりたい。
そのことも、『自分の仕事をつくる』を読みながら、なんとなく思い浮かべていたことだ。


このへんは、また話がすすんでから書いていこう。


ここでいきなり話は
『恋空』みたいな展開になるのだけど、
ぼくがフリーになるにさいして、
仕事環境を気前よく提供してくれると言ったボスは、
いま、体がわるい。
とてもわるい。

今日も、職場にでてこられない。

状況が刻々と変わっていって、
好むと好まざるとにかかわりなく、
ぼくが仕事を変える日は近づいている。