2008-01-01から1年間の記事一覧

映画を観ることと哲学することはどのように似ているか

東浩紀の『文学環境論journal』を読んだのは、 「早稲田文学新人賞」の審査員を東浩紀がやる、しかも一人でやる、 というニュースを聞いて、 さらにフリーマガジン『WB』のインタビューでは 「オレの考える文学は、いまぜったい勝てる自信がある!」 みたいな…

杉本博司 シャッター、フレーム、虚像

人間の眼を写真機という機械になぞらえてみると、 水晶体がレンズ、網膜がフィルム、瞳が絞りということになる。 ではシャッターは眼の何にあたるのだろう。 ● 原稿の締め切りになんとか間に合ったので、 じぶんへのご褒美もかねて 『白鯨』を読むという読書…

『白鯨』を読む13 こわいもの

よくある話なのかもしれない。 ● 小室哲哉の逮捕を機に、 globeの動画をネットでさがしてみたりして 「Anytime smokin' cigarette」(リンク) のなかでKEIKOの歌う姿をみているうちに、 熱が出て、ねこんだ。 ● 何年か前、ヴィスコンティの『ルードヴィヒ …

『白鯨』を読む12 斎藤環と境界線上の人々

残された時間がすくなくなっている。 こんなときは、抱え込んだ課題をとっかえひっかえ確認することで時間を費やしてしまいがちだけど 一定の集中力をなにかに傾ける以外に、まえにすすむ道はない。 と、いうようなことは、 「急がば回れ」と、とてもコンパ…

『白鯨』を読む11 私は要約が下手だという人

先週末、仕事で京都に出張することになって、 行き帰りの新幹線のなかで、 まとまった読書の時間がつくれたのだから ここぞと『白鯨』を読めばいいものの ぼくがカバンに入れていったのは保坂和志の『小説の誕生』だった。 ● これは「新潮」で延々つづいてい…

『白鯨』を読む10 加藤典洋の引用

加藤典洋の『僕が批評家になったわけ』を読んだ。 批評とはなんだろうか、という問いに対する加藤さんの応えは、以下のようなものだ。 批評とは、ものを考えることがことばになったものだ。 あるいは 頭上には世界がある。 地上には世間がある。 批評はすぐ…

『白鯨』を読む09 誕生月の小説

ある朝、ママから絶縁状が届く。 淡いピンク色の便箋にブルーの文字で、「ママです」と書き出されていた。 封筒には、差出人の名前も住所もなかったけれど、 このニョッキみたいにまるまるとした字はママに間違いなかった。 縁を切られるおぼえはなかった。…

『白鯨』を読む08 テストの答え合わせ

まさに鯨でげす。 『ハムレット』 冒頭の 「鯨という語を含む名文抄」をパラパラと読んでいる。 まだ物語ははじまっていない。 いや、この小説に物語を期待するのは間違いではないかという予感がする。 ていうか、期待なり予感なりを言い出すのすら、まだ早…

『白鯨』を読む07 長距離走者たちの孤独

『きいろいゾウ』を読み終わる。 ジュディ・パドリッツの『空中スキップ』も。 あと、シャロン・モアレムの『迷惑な進化』も、 それから、ディトリックの『石ころの話』もさいごの頁まで到達した。 すこし前におなじタイミングで読み始めた本が 足並みをそろ…

『白鯨』を読む06 最後の物たちの国で

名前は忘れたが、犬を連れた男性に会う。 西加奈子の『きいろいゾウ』を読みすすめている。 おもしろい、だけでなく 思っていたより油断ならない小説で (その油断ならなさこそが「おもしろい」わけだけれど) たとえば文庫本の105頁にある 上のような一文に…

『白鯨』を読む05 スティル・ライフ

というわけで、ツマのすすめで『きいろいゾウ』も読んでいる。 ツマについて、少し書いておこう。 彼女はこれまでの人生で、本とはほとんど無縁に生きてきた人で あるときは 「ノンフィクションが好き」 と言いのけたりするのだけれど ぼくは怖くて 「じゃあ…

『白鯨』を読む04 きいろいゾウ

お風呂に入ろうと思って服を脱いだら、浴槽に茹で上がった蟹が浮いていた。 ひきつづき身辺整理を進めていて まだ『白鯨』を読めていない。 きのうはNHKブックスの『ジンメル・つながりの哲学』を読み終えた。 「社会」ってのは、遠くにあるものじゃなくって…

『白鯨』を読む03 トーマス・M・ディッシュの言葉

身辺整理のために、図書館に何冊かの本を返しに行く。 その足で本屋へ。 集英社から文庫本で、 池澤夏樹の『パレオマニア』が出ているのを知る。 ちょうど欲しかった本だ。 奥泉光の『モーダルな事象』も文春文庫になっていた (ただし単行本のときにあった…

『白鯨』を読む02 カバー装着

いっそのこと、宣言しておこう。 ぼくは、『白鯨』を読了するまで、あたらしい本を、買わない ……と、昨日書き込もうとおもっていたのだけど そのまえに近くの本屋にいって 『S-Fマガジン』のジーン・ウルフ「新しい太陽の書」特集号(リンク)と 東浩紀と大…

『白鯨』を読む01 ためつすがめつ

「うちの本棚が燃えてなくなったらすっきりするのに」 という夢想がきのうも頭をかすめた。 計算機を叩かなくてもわかる。 ぼくはじぶんが買い集めたこれらの本を、のこりの一生かけても読み切ることができない。 いままでだって、何度も気づいていて、 でも…