2008-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『白鯨』を読む12 斎藤環と境界線上の人々

残された時間がすくなくなっている。 こんなときは、抱え込んだ課題をとっかえひっかえ確認することで時間を費やしてしまいがちだけど 一定の集中力をなにかに傾ける以外に、まえにすすむ道はない。 と、いうようなことは、 「急がば回れ」と、とてもコンパ…

『白鯨』を読む11 私は要約が下手だという人

先週末、仕事で京都に出張することになって、 行き帰りの新幹線のなかで、 まとまった読書の時間がつくれたのだから ここぞと『白鯨』を読めばいいものの ぼくがカバンに入れていったのは保坂和志の『小説の誕生』だった。 ● これは「新潮」で延々つづいてい…

『白鯨』を読む10 加藤典洋の引用

加藤典洋の『僕が批評家になったわけ』を読んだ。 批評とはなんだろうか、という問いに対する加藤さんの応えは、以下のようなものだ。 批評とは、ものを考えることがことばになったものだ。 あるいは 頭上には世界がある。 地上には世間がある。 批評はすぐ…

『白鯨』を読む09 誕生月の小説

ある朝、ママから絶縁状が届く。 淡いピンク色の便箋にブルーの文字で、「ママです」と書き出されていた。 封筒には、差出人の名前も住所もなかったけれど、 このニョッキみたいにまるまるとした字はママに間違いなかった。 縁を切られるおぼえはなかった。…